3年前、夕食後に街に出た。メキシコのコズメルで、クレジットカードのスキミングをやられた。それも、世界的に有名な若者に人気のチェーンショップである。やや薄暗い店内のレジにいた若い店員が、私のクレジットカードを一度機械にスライドしておきながら、その手で、すぐ下の小さなものに、同じ手のアクションをした。つまり、別
の機械に再びスライドしたのだ。私は、うかつにも他に買うモノはないかと壁を見回していた。店員を真横から見る位
置にいたのがカミサンだとは、彼は知らずに、2度目のスライドをしたのだった。その場で指摘するのをカミサンはためらった。店を出てすぐ、船に戻った。幸い停泊中なので、携帯電話は使える。
日本に電話して、カードのストップを頼んだ。更に、緊急カードの発行を申請し、サンディエゴ港で受け取ることで電話を切った。その直後、船は陸を離れた。
今回のクルーズで、やはりスキミングと思われる事件が起きた。先回、このスキミングのことを本にも書いた。その本を読んでおられたご夫妻が、食後、私のテーブルに来られた。本を買ったという話だったので、恐縮してお礼を述べた。ところが話はそれで終わらなかったのだ。ロンドンの土産物屋で不審な問答があったというのだ。ツアーバスを待たせての買い物だから、時間的に急いでいた。
客の目の前で、クレジットカードを何度かスライドしたアクションを見せつけた上で、通
りませんねと首を傾げたという。そして、店員はカードを持って奥に入って、奥の機械では通
りました、と安心した顔つきで明るく言いいならが、暗証番号は何番でしょ?の質問に、番号を口にしてしまったらしい。急いで買い物を手にバスに乗った。バスが走り出してから、おかしいな、どうして最初は通
らなかったのだろうということを気にしていたという。「思い切って世界一周」の著者が、今回も乗っていると食事で一緒になった方から聞いて、相談したいということだった。船は既にロンドンのテムズ河口を離れてしまった。私と同じクレジットカード会社だった。しかし、陸を離れた今では、私の携帯電話は繋がらない。
通る、通らないという問題よりも、暗証番号を聞くこと自体が大問題ですよ、本来店員側が訊くべきことではないし、口頭で答える必要もないのです、すぐに無線室から日本のカードサービス会社へ電話して、ストップしたほうがいいですねと、言い切った。話を聞いていて腹が立った。日本語で話したと言うことは、店員が日本人だということだ。バスを待たせていることを知り尽くしていて、急ぐシニアの観光客を鴨にして、騙すとは。同じ手口を何度となく成功させているに違いないからだ。次のシニアも餌食になる可能性があるからだ。土産物屋の名前は当然ながら憶えていない。
大西洋を越え、自由の女神の出迎えを受けて、ニューヨークに入った。映画好きな妻には、一度ニューヨークに連れて行きたかった。今回の大きな動機のひとつだった。雨のニューヨークを妻を連れて、あちこち歩き回った。某有名デパートに入った。上層階までエスカレーターで昇り、店内の雰囲気を受け止めさせて、ある階で降りた。
そのコーナーは、ファニチュアを展示しているフロアだった。友人は、ラルフローレンのバスタオルを買い、妻は記念にテーブルマットを買った。私のクレジットカードを出すと、店員はすぐに処理して返してくれた。サインをしてくれとデジタル画面
を指す。デジタルペンでサインしたが、途中でペンの滑りが早く、少し間違えた。手が止まった。そのままになった。だが、店員は確認しないままで、そのままに終った。私は戸惑った。完全にサインし終わっていなかったのだ。彼女はバアイ、ハヴアナイストリップ、と指を揺らす。つられてその場を去る。
しかし、釈然としない。最初から、日本人や中国人の文字は判読できないからと諦めているのか、信用しているのか、面
倒なのか。因みに、私のサインは、漢字ではない。シグネチャーの国でありながら、アバウトなところが危ない。これでは、日本人のクレジットカードは、盗用出来るなと直感した。スキミングされた場合は、苦もなく多大な買い物をされてしまう。それが、世界的に名の通
ったデパートであるだけに、更に怖くなったものだ。
ところで、バスタオルを買った妻の友人は、JCBだった。この有名なデパートで、JCBは拒絶された。JCBの広告が、世界の有名店では通
用するかのようなコピーが書かれているが、ロンドンのブランドショップでも、ニューヨークでも、マスターか、ヴィザはないかと問われたことを付記しておく。
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