「ブランド」。「コーポレイト・アイデンティティ(C.I.)」。
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そういえば、ここの窓外からは、広告らしきものは、目に入らない。
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目を凝らしてみると、左は、信濃町の中央線にかかる橋の先に「公明党」、
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右手の神宮プールの奥に「toto」、これ以外見当たらない。
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遠くに林立するビルの社名は、読めない。考えてみれば、不思議な光景を目にして、
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毎日寝起きしているんだと、解った。こういう景色は、熱海の自宅にしかないと思っていたからだ。
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思い出したが、昔、 ブルボンが、まだ北日本食品工業という名前だった頃、
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真っ黒い屋根瓦の家並を撮影したかったことがある。輪島周辺までロケハンした。
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あろうかことか、クライアントの社長自らが、ハンドルを握って、周辺を走って下さった。
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(なにせ、 博報堂の新潟支社長が単独で伺っても、会えなかったほどの社長がであります。)
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小高い丘に登って、やっと見つけることができました。広告看板がひとつも掲げられていない風景が。
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ああ、また思い出しました。
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I.B.M.のSEが、街の得意先を訪ね歩くシーンを俯瞰で撮るときも、苦労した。
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ナビの無い時代だから、高額なゼンリンの地図を手に、都内を相当探しまくったあげくに、
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快諾を得たT路地の正面の民家の2階から撮影させていただいた。
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その時に、レンズビューで見るまでもなく、あたり一面
、広告看板だらけで、唖然とした。
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美術担当のスタッフは、画角に入る部分の電柱から、軒先看板ロゴから、
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そのすべてを巻き尺で測り、撮影当日になんと、はめ込んだ。
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今、CG技術で、他のものに差し替えが当たり前の若い人たちには、不思議に思えるだろうような
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苦労である。それほど、この日本には、広告ロゴの氾濫が見られる。
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いや、見られているのだろうか。有るに過ぎないのか。
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(フリーズドライ製法での顆粒状の)烏龍茶の新発売広告のためだった。
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二度目は、中国と日本の衛星放送開始のモーニングショーの生番組だった。
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三度目は、博報堂上海にいる友人、奥野副社長のところに定年前に遊びに行った時だ。
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高速道路の料金所から、200メートルほどと記憶しているが、
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ドライバーの目に入る角度に斜めに設置された何枚もの連続型の広告板だった。
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また、市内の繁華街の車道の上に、アーチ状に架かっている多くの広告看板だった。
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これが、えええ、中国〜〜う?!?と、大きな声で口にしたことを覚えている。
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こういう自分が、屋外広告の先進国、アメリカの街でそれを大いに利用したことがある。
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ニューヨークである。それもブロードウエイである。
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それより以前に、 日興証券CMでの情報告知に利用したいと見ておいたものだったが、
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(結局は、ロケはサン・フランシスコ郊外の草原で、まだ幼なかった後藤久美子(後のゴクミ)を
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立たせた企画に、変わってしまったのだが)、あの、でかい電光掲示板に、
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或るロゴを浮き上がらせたかったのだ。タイミングは、ニューヨークでその商品が販売される時期、
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この街のビジネスマンの眼に発信したかったこと、勿論、日本からの観光客の足も停めさせたかった。
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夕方近くまでにCM撮影カメラマンも、スチル撮影カメラマンもスイッチに指をかけながら、
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固唾をのんで待ったものは・・・・・・・・・・・・・・
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そして、その文字が動いている瞬間の写
真は、事前にプレゼン提案した作戦通り、
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翌年の新年の全ページ新聞広告として出した。
「新しいビール通は、この味を選んだ。」
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失敗例としては、青山キラー通りの出発点、ベルコモンズ横にある、
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縦長の屋外広告スペースで起きた。毎年好評だったCMのワンカットを、そこに掲出したときだ。
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無名とは言え、ロス・アンジェルスのモデルの顔が出ていた。
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ある日、クライアントに電話が入った。媒体使用契約に無い掲出がされていないかと。
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交渉の結果、追加の支払いで事無き?を得た。ミスである。明らかに、我々日本側のミスであった。
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世界は狭いということだ。常時、世界のモデルは、流動的である。
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女性モデルは、当時香港でのファッションショーの往復路に、日本で少し稼いだりもしていたし、
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エリート・モデル・エージエンシーをはじめ他社も、日本の外人好きを商機と見込んで、
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多くの写真を送り込んでいた。その中で、男性モデルを目ざとく見つけるケースは多い。
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しかし、モデリング・エージェンシーのレップが日本に居ることも当然で、
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おそらく、彼らの目が確認をしてきたのだろうと思う。
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ホテルのサービス評定をする、ホテルGメンとは異なるが、ビジネスモデルで訴えられる現代では、
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当時よりも、一層の配慮と知識が必要である。
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ましてや、ネットビジネスのいま、著作権は大きな問題になりかかっている。
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これが、神宮の森を前にして、街の広告看板を思い出したことだった。
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